エクステンデッドリアリティ(XR)メーカー向けの高機能材料

エクステンデッドリアリティ(XR)が提供する没入体験(イマーシブエクスペリエンス)が世界の市場を席巻しています。拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)の総称であるXRは、ゲームやエンターテインメントにとどまらない多様な用途を持つ新興技術です。ヘルスケア、小売、不動産、職業訓練、リモートワークなどの産業はいずれも、XRの導入を進めています。それは、地理的な障害を取り除き、人と場所、製品をつなぐ力がXRにあるからです。
エンターテインメント、コマーシャル、教育・研究機関などのセクターは、XRの革新的な新用途を模索し続けています。メタ社(旧フェイスブック)はこの社会的技術をフルに活用すべく、メタバースを通じてVRとARの推進・構築に大々的に取り組んでいます。そのため、複数の報告書によると、XR市場は2022年から2026年にかけて年間57.91%の成長率が予想され、2026年末までに市場価値が3,978億1,000万米ドル(2020年は258億4,000万米ドル)に達する見通しですが、これも驚くにはあたりません。
この技術のメーカーは、XRデバイスの改良に取り組み、視覚的クオリティを高めるとともに、ヘッドセットの軽量化とコンパクト化を図っています。VR用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、ヘッドトラッキングセンサー、オーディオコンポーネント、レンズ、そしてディスプレイで構成されています。最後の2つが、3D没入体験の中核的構成部分で、ヘッドセットの大部分を占めています。
ディスプレイは、片目に1つずつ、計2つの高解像度画像を生成します。この画像はレンズを通った後、ディスプレイ部からの光の角度を変え、誘導します。これで広視野を実現し、画像をクリアに表示し、距離感を錯覚させています。これには、VRによる目の疲労を和らげる効果もあります。
一方、XRで物理的環境に高品質デジタル画像を重ね合わせるときにはニアアイディスプレイが使用されます。ARでは、テレプロンプターによく似たビームスプリッターを使い、ソフトウェアで作成したバーチャル画像と現実世界の景色を融合させます。この技術の有用性を支えているのは薄く軽量のグラスです。
最新のVR・AR用HMDにはフレネルレンズが使われています。このレンズは従来の非球面レンズに比べ軽量で安価ですが、独自の問題点もあります。フレネルレンズは、一連の小さく狭い同心円状の溝で構成されています。この溝が色収差とゆがみを生み、XR体験のクオリティと心地よさを損なわせてしまいます。
新しいタイプのワイヤーグリッド偏光板
需要が拡大し続け、市場での競争が激化するなか、XR関連企業は、AR/VR体験を向上させ、提供する方法を模索しています。
多くの企業にとって、鍵を握る改善点は、ハードウェアであるレンズにあります。そこで登場したのがパンケーキ型レンズです。フレネルレンズより格段に薄いこのレンズは、レンズエレメントを追加することなく、質の高い光学特性を提供します。最近のテクノロジーブレイクスルーにより、パンケーキ型レンズは次世代HMDの標準になるはずです。
パンケーキ型レンズは、「折り畳み式」偏光設計によりXRグラスに最適の選択肢です。このレンズは従来のレンズに比べ高解像度画像、広視野、軽量化、小型化、薄型化を実現しました。また、焦点を調節することもできます。ARやVRに使用するXRグラスの需要が高まるにつれ、パンケーキ型レンズの需要も高まっています。
AR/VRグラスの光学部品を製造するメーカーは、AR向けの偏光ビームスプリッター(PBS)とVRゴーグル用の薄いパンケーキ型レンズに簡単に加工できる反射性偏光フィルムが必要です。
旭化成グループの当社のパートナーは、樹脂フィルムをベースとした世界初のワイヤーグリッド偏光板「WGF?」を開発しました。パンケーキ型レンズは金属製ワイヤーグリッド(反射性)偏光板を使用することが少なくありません。WGFの構造はアルミニウム製のナノワイヤで構成されています。このワイヤーグリッドによる偏光分離によって、可視光、赤外光やさらに長波長の波長帯での高い偏光分離性能を有しています。このフィルム形態により、柔軟性もあり、各種形状・サイズに成形できます。試験をすると、ほかの一般的な吸収型偏光板と比べ、WGFは高い耐熱性と耐久性を示します。
当社のソリューション
特に向いているのは、ビームスプリッター(WGFがプリズム間に挟まれた)(LCoS(liquid crystal on silicon)を使用したARディスプレイに用いるものや、VR向け)などの用途用です。WGFを別の樹脂と組み合わせ、3Dレンズの曲線形状に成形できます。
WGFの偏光特性のおかげで、可視光と赤外光を使った画像センサーで高解像度画像をとらえるためのノイズフィルターの役割も果たすことができるため、赤外線検査装置にも役立ちます。
低複屈折材料を活用する
柔軟性のあるWGFと低複屈折材料を組み合わせて、光学デバイスに使用することで生まれる可能性は無限大です。
長瀬産業はこの偏光板と光学樹脂の強力な組み合わせを提供できる唯一の企業です。パートナーシップを通じて、当社はこうした材料の組み合わせから成るPBS構成部品とパンケーキ型レンズのサンプルをお客様候補に提供し、各種用途でのこれら材料の有効性を直ちに実証することができます。
市場の成長を促す
メタ社、HTC社、ユニティ社、マイクロソフト社やサムソン社のような企業は、革新的なXR技術の開発を推し進めています。市場原理により、この産業の値ごろ感(アフォーダビリティ)とアクセシビリティ、安心感(コンフォート)、そして質が高まってきた今、お客様は革新的なソリューションを、しかも早急に求めています。旭化成とタッグを組む協調的アプローチで、当社は幅広いAR/VRグラス用光学部品をお客様に提供することができます。当社が偏光板や低複屈折光学樹脂、プロセス開発、成形メーカーへのアクセスをワンストップで提供することができるため、短期間での新製品発売も可能です。
XRデバイスの進化を推進する
長瀬産業は、化学品、合成樹脂、エレクトロニクス、自動車、ライフサイエンスなどの幅広い業界と仕事を行いながら、新たな最先端技術の開発を続けています。現在はパートナー企業と共同でWGFをプラスチックレンズに効果的に接着させるため、パンケーキ型レンズの開発を進めています。これはXRグラスのゲームチェンジャーです。さらなる軽量化と小型化を図りながら、耐久性を高めることができます。
長瀬産業とグループ会社の幅広いネットワークがお客様の光学技術の進歩にどのように役立つかについて詳しくは、当社のエキスパートにお問い合わせください。
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