拡張現実向け光学デバイス用透明樹脂を設計する

拡張現実(AR/XR)グラスは、エンターテインメントからヘルスケアまで、幅広い産業で新たなビジネスチャンスを数々もたらしています。2021年のAR市場規模は、世界全体で推計253億3,000万米ドルでした。2022年から2030年にかけて、年平均成長率(CAGR)40.9%のペースで成長を続けるとの見通しを示しています。
これを可能にするには、光学的に透明で屈折率の高い新材料で、画像を画像源からユーザーの目に送る経路を作る必要があります。導波路と呼ばれるこの技術には、高屈折から低屈折の光学的特性を有しながら、ナノインプリントが可能な透明樹脂が必要です。
当社のチームは最近、このユニークな課題に挑むことを決め、以下に概要を示すように、ソリューションを提案し、その成果の試験を行いました。
課題
AR/XR デバイスでは、導波路が光の屈曲と合波を助け、デバイス装着者の目に見えるデジタル画像を生成します。このデジタル画像はその後、現実世界に重ね合わせられます。現在、ARグラス用導波路の開発が急ピッチで進められています。また、視野角を50度以上にするために、高屈折率で、ナノインプリントが可能な材料が必要です。
こうしたAR/XRデバイスの開発にあたっては、クリアなナノインプリントを可能にし、かつ、必要な高屈折から低屈折の光学的特性を実現する材料を見つけることが課題となってきました。屈折率が約1.8の材料があるものの、これはナノインプリントがきれいにできないため、技術的ニーズを十分に満たせないことが判明しました。
多くの導波路メーカーは、以下などの問題に直面していました。
- モールドの充填が不十分
- モールドの剥離が難しい
- ナノレベルの精密な形状の形成
このような障害により、AR/XRデバイスの製品開発は一時停止を余儀なくされることが少なくありません。
ソリューション
導波路メーカーが直面する問題を受け、当社の専門チームの1つが、クリーンなナノインプリントを実現しながら、2.0の高屈折から1.1の低屈折までの屈折が可能な透明樹脂の設計と試験に着手しました。当社が目指していた最終ゴールは、AR光学デバイスの機能向上に資する透明樹脂の開発です。
最初のターゲットは、導光機能が必要なARグラス市場でした。光学的特性を評価して、その機能がお客様の期待に沿うものかどうかを調べました。試験を社内で行うことができる場合もあれば、試験を第三者に委託する場合もあります。お客様の要件に応じて、評価の仕方も成果も異なってきます。
他社も、設備が提供されれば、材料の供給のみの場合に比べ、PDCA(計画・実行・評価・改善)が著しく迅速化されるという仮説に基づき、プロトタイプを導入しました。お客様の最適な設計のプロトタイプを作製することで、材料と問題の範囲を把握し、短時間でお客様にソリューションを提案できるようになりました。
その結果、製品開発が進み、早く上市することも可能になりました。
成果
Inkron社は視野角が60°と広い製品を開発しました。これは世界で市販されているなかで最高品質の製品です。他社の材料を使ったこのデバイスの性能を比較し、紹介しています。XRグラスに搭載することで、被写体をより大きく、かつ高い解像度で見ることができるようになりました。
ほかに、当社のチームはナノインプリントを施したガラス基板を提供できるプロトタイプシステムも開発しました。これにより当社はお客様に代わってインプリントをすることもできます。そのため、Inkron社は企業とタッグを組んで、高屈折ガラスやナノモールディング、プリンティング装置、プロセスを盛り込んだソリューション案を開発することができます。当社には、お客様から委託を受けて、ガラス基板にナノインプリントを施すことができるプロトタイプシステムがあります。インプリンティングはこれまで一般的に、お客様側のプロセスでしたが、このプロセスを当社のチームが行うことができるようになりました。それにより、お客様はInkron社と一気通貫で製品を開発、試験、生産できます。
今後の展開
当社の経験豊富なチームは、そのお客様のニーズを踏まえてグレードを選び、提案することができ、また設計の最適化をお手伝いすることも可能です。それだけではありません。各分野の老舗の設備メーカーと連携し、最適な材料の提案もいたします。プロジェクトの完了に必要な設備がない場合には、当社のチームがインプリントサービスソリューションも提供します。
同様のAR/XR導波路の課題への対処にあたり、当社の樹脂材料のエキスパートのサポートが必要な場合には、当社にご連絡ください。
関連するコンテンツ
お気軽に
ご連絡ください。
右記のフォームにお問い合わせ内容をご入力いただき、個人情報の取り扱いに同意の上「送信する」ボタンを押してください。